鬼頭 曄氏の思い出
伊藤朝彦
鬼頭曄氏についてと依頼されましたが、とても思い出せません。
卒業制作に、大作を皆の前に置いて見せてもらったことがあります。美男子の彼は自家用車をもってあっちこっちと個展を見て廻り話ずきの方でした。私が自由美術の会員になった頃、彼は卒業しパリに仕事をもちに出かける頃でした。帰国後紀伊国屋、西武美術館などでいろんな話があった様です。上野旧美術館での活動はパリから帰国してからのことで、個人の個展をよく見ていたし、酒も飲み大ゲンカをしたことなど、私の頭から抜けません。
細密な描写は日本画を学ばれたせいか小さいマチエルで小品でも驚くばかりの表現を見せられたものです。達者なフランス語で田賀亮三氏とペラペラしゃべっている雰囲気はそばにいた我々にも大きな刺激となっています。酒を飲み車の運転をするのですから、今なら大変な「違反」者といえましょう。
彼の葬儀では自由の仲間が多勢来ていました。かわいい娘さんと若奥様の姿を見て、あまりにも早い葬儀に残念な思いをさせられました。美校時代の同級生に八幡健二さんもおられたし自由の仲間を大切にし互いに励ましあったことは忘れません。
私の年から思い出して四、五十年たった回想でとても記憶と言えることはないのですが、楽しかった自由美術を又生み出し語りあいたいものです。
鬼頭 曄 略歴
1925 東京世田谷に生まれる
1948 東京美術学校日本画科卒業
1949 ~ 1952 自由美術家協会展出品
1949 自由美術家協会会員となる
1952 フランス政府保護留学生
パリ国立美術学校スーヴェルビー教室
在仏17 年
1969.70 西武百貨店画廊(渋谷、池袋)個展
1972 ~ 自由美術展出品
1976 自由美術賞受賞
1994 永眠 享年69 歳