自由美術 佳作賞展

'16年受賞者による佳作賞展 '17年4月11日(火)〜16日(日)

PAROS GALLERY(大森)

佳作賞展をみて

美濃部 民子

yamada.jpg山田哲夫氏(愛知)

メゾチントを中心にエッチングやアクワチントの技法を駆使した版画の作品。佳作賞受賞と共に新会員にもなられた方で創作意図などは3月発行の自由美術パンフに掲載されているので記憶されている方も多いと思います。過去の人間たちの行為としての美をテーマにして創作を続けていると作者は述べておられます。ある時代の人々の切なる必然として完成されたものをテーマに選択した場合、よほど注意深く取り組まないと、狙いと全く逆の効果を生んでしまうのではないでしょうか。そんな危うさを持ちましたが、世界中の遺跡を尋ね歩き、社会でも一角(ひとかど)のお仕事をし終えた方に、今更狭い所で生きてきた私が何か言うのも……と思いました。

 

igarashi.jpg五十嵐久美子氏(東京)

五十嵐さんの作品については本展の寸評でも書かせていただいたので、再度書き手が私で申しわけないのですが、私の好きな作家です。本展と佳作賞展の間に個展も開催されたので同じ作品を並べたくないとのことで、大きめの作品とコラグラフという技法の版画の小品が展示されていた。色々な素材や技法を使って色数をおさえた画面を誠実に心をこめて創っていてそこに醸し出される詩情に私は心引かれます。見せようといったあざとさがないところ、自分の作品としっかり対話をしながら創り上げていくところに魅力を感じます。小品の版画作品には作者のともすれば趣味的に陥ってしまう面が出てしまったようで残念に思います。てこずりながらもコツコツと積み上がっていく画面の方を私は好ましく思います。

 

sakata.jpg坂田均氏(長野)

坂田さんの作品は本展の作品と全く違った作風。思えば審査の時、全く違った作風の作品が10 点程並んだのをご記憶でしょうか?それが坂田均さんです。作者自身も色々な絵を試してみたい段階なのかも知れません。長いこと実践してきた手法ではないので、まだまだこれからと思うのですが、一つの手法での試行錯誤を待たず他の表現手法に移行してしまうのかも知れないと想像します。巧まずして現われた美しい形や色が作者の手に残らずこぼれていってしまうことがあるのではないでしょうか。文学的なテーマがいまひとつ造形にうまく移行できていないのも気になります。

佳作賞展全体としては画廊での発表ということで美術館とは又違う工夫が必要だと思います。そこがうまくいくともっと魅力的な展覧会になったのにと残念に思いました。

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