よき時代の自由美術

藤 井 喜久雄

−長谷川氏よりの手紙−

同封のハガキは1952 年16 回自由美術展初出品し見事に落選した時のものです。この時期はどの程度の一般出品者があったのか知りませんが、長谷川氏が実筆で、落選の理由と今後の作画についてアドバイスしてくださったのには感激しました。ほんとによき時代でした。以来64 年も経った今も、あたたかくのびのびとの指導に答えられず描いている次第です。

京都市右京区

西院春栄町寮内

藤井 喜久雄様

東京都●●●●●●●●●●●●番地

自由美術家協会

長谷川三郎

最後の最後迄残りながら惜しくも落ちました。よく勉強になった跡は分かりますが、それが却て絵を窮屈にし、冷くしたかと思います。様式的なとらわれを脱してもっとラクで自由な態度で制作されるとよいと思います。かたくつめたくならぬよう。あたたかくのびのびとお描きになるように祈ります。