荷作りの一日

塩 井 裕 子

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塩井裕子

自由展への出品は44 年になります。今年も、また9月、荷作りをすることでしょう。荷作りをするということは、発表すること。自由美術のみなさん、友人、知らない人、みんなにみられるのだ。その独特のどうしようもない緊張感、不安と期待・・・毎年襲ってくる。何年たっても変わらない。待ち構えていたりする。作品に込めたもの、向かう方向、表現の仕方は間違っていないかしら・・・作品と共に過ごした時間が思い浮かび、一年を振り返ることになります。

日々生活しているなかに多くの矛盾、束縛があって、自由でいたいと願っている気持ちで、今日も生きていますよと、毎日のこととして確認するように、日記のように制作しています。自由美術のさまざまな作品、人と出会い、価値観が変わる程の影響を受けることがあります。価値観が変わる、それはとても怖いものですが、変える勇気、認める覚悟も必要です。自己満足に終わらないように自由美術のなか、個を保つ感覚を磨いていきたいです。

ロープで縛りながらの私の貴重な、大切な時間です。

作品を送り出した後の部屋は、厳しくもやさしく私を迎え入れてくれます。一息つきながら、トラックのなかの作品を思いながら、明日は新しいキャンバスを・・・と思うようになって、荷造りの一日は終わります。

荷造りの一日は、私に一年に一度ある、一年の終わりであり、始まりの日。私が一年に一度食らう魅力ある麻薬のよう、毎年食らわずにはいられないものです。