自由美術 佳作賞展

'15年受賞者による佳作賞展'16年4月12日(火)〜17日(日)
PAROS GALLERY

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平面作品を見て

西 村 幸 生

 

平面作家6名、20号〜30号各自2点、立体作家3名は、各自2〜3点の出品による、2015年度佳作賞受賞者による『自由美術佳作賞展』が、大森のギャラリーPAROSで聞かれた。200名近い出品者の中より選ばれた、期待される作家たちです。

作品の大きさが揃えてあるので、落着いた、見やすい会場になり、一人ひとりの仕事が良く分かるようになっていました。

今井 忍 『BLUE ARE A』 青い色相に、軽快な線が走り、少量の暖色系の色が効いていて、美しい作品に仕上がっていました。青い画面からは、海を感じ、生命の蠢きが感じられます。気持ちが乗って仕事が出来ているのでしょう。そんな心地よさが伝わってくるようでした。

新堀久子 『枝』 押さえた色調で、草原に本の枝を構成した風景で、まだ新芽の出ない、冬なのでしょうか、寂しさと厳しさを漂わせた哀愁のある作品になっています。色彩に魅力があるのですが、描写性が強い分説明的に感じ、物足りなく感じてしまいます。もっと構成を強めて、自分を出したほうが『絵』が、面白く展開するように思うのですが、どうでしょうか。

横枕義郎 『PAUSE ×2』 軽いポップな作風で、女性の顔を大きく描いている。目をつぶり舌を出した顔の左右には、十字架が描かれている。何かに耐えているのだろうか、出した舌は、諦めなのか、人生を逆転させようというしたたかさなのか。本展の作品に見えた、たどたどしさの方に惹かれるのですが、器用に絵を作ることは、どうなのかと考えてしまいました。

藤田和子『縄2803B』 白黒のモノトーンの作品です。縄が二重に空間を舞っていて、丁寧な描写が生きて密度を感じさせます。縄は絹の光沢をたたえ、動きと広がりが良く出ています。どこかで見たことのあるような平凡さを何とかしようと葛藤しているのが、縄と周りの空間の捉え方の迷いに感じました。迷いが、この先面白くなりそうな期待を抱かせているように感じました。

石井ゆき 『対話の予感』 本展の作品と同じ構図による作品で、人体を平面的な色彩表現で現していて、周りの空間とも響きあい、素直な作品になっています。色彩も綺麗になりそうな期待を持たせます。もう1点の『地底から』は、色彩の統一感は無いですが、情念を感じさす、緊張感と強さがあります。どちらが石井さんなのかなと考えて見さしてもらいました。

光山久子 『刻の記憶B』 青緑の空間に、竜巻のように舞い上がる人々、自然の雄大さと、それに翻弄される人々を描いています。ここ数年のテーマで、自分の形象にこだわり表現されている姿勢は好感が持てます。最後にかけた、パートシェンナーと下の色の関係で、絵が暗く、汚れたようになり残念に思いました。重たいテーマだからこそ本展の絵のように、明るい方が広がりが出るという事もあると思いますが、どうでしょう

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立体作品を見る

北 村 隆 博

 

苦労して創作した作品を良いぞと認められることは大変嬉しいし、次に向かう意欲が生まれる。

今回は三名の作家が出展された。何れも正しく佳作で三人三様立派なものである。また選んだ人々の眼力を思った。

中原悌二郎氏がロダン展を見て、ロダンは人体の構成の底の底まで呑み込んでいる。尺にも満たない作品があれほど大きく、力に満ちている。形は極端に言って四角な面と線で構成されていて、筋肉の伸縮、弛緊は抑揚に富んでいる。と書いている。この文を思い出しながら鑑賞した。

中西保裕さんは黒御影石の作品二点、「ときめきの瞬間」は波の形にときめきを感じとった作者の気持ちの表現か。「風の中で」は母子像で、石の塊りを胴とし、上に親子の頭部が彫り出された情愛あふれる作品。

野村弘枝さんは粘土像を樹脂にした作品二点、「待つ」は畝に座って人を待つ男性の像と見る。「頭痛」は頭像で、苦痛に耐える姿で、粘土を角柱で叩き絞めた面の表現を意識した中原氏の文を思い出させた佳作である。

辻忍さんは大きい一枚の板から思いの形を彫り出した三点で、日本の伝統を思わせた。「草原にて」は杉の板で二つの形を彫り出して、薄く軽くした花びらが空を飛ぶような感じの作品、「風よ」は草原にその軽さはなく欅の作品で地面に在って、二つの形がしっかりと風を受けている感じ。「遠くまで」は二米大の檜の板に無数の空間を持たせた軽やかな作品、セメント壁の前に置くとセメント壁も美しく共鳴してくれるだろうと思う。

三人の作品を見せて頂き、作家は毎日作品と向き合い、そして、次なる作品の構想や試作を繰り返されているだろうと思う。

子供のように無心で自己感情に忠実でありたいと思う。 

 

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