後藤拓哉

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“自作を語る”・・・・。いつも思うことだが、重いテーマである。しかし、考えようによっては、自分の作品を改めて客観的に見つめ直す機会でもあるようにも思える。

原稿依頼の承諾後しばらくしてから、さてどんな内容で書こうかと思い巡らし、過去の本誌を眺めていたら、ちょうど2年前に同じテーマで寄稿していた自分を発見。“あれっ、また・・・・? ” と思いつつも後戻りできない状態。2年前は「冷たい白と温かい白」というサブテーマで、秋田県人の自身が持ち合わせている日常的な“白”のイメージと、異なる風土などから感じ得た非日常的な“白”の印象の違いから、作品の中に見て取れる“白”という色の持つ温度感や豊かさについて触れていた。

前回とは違った視点から書かなければならないところが苦しいのであるが、自由美術秋田グループで、私の学生時代から現在までの30 余年の作品を取り上げた作家研究会が、2010 年に行われているので、今回はその時の内容からキーワード的なものを拾い上げながら自作について考察してみたい。

<雲と空を意識した作品> ・・・・初期の頃から持ち続けていた風景に対する憧憬は、大空や空を飛ぶことへのあこがれへと拡がった。雲の上の世界、時差の不思議、丸い地球の神秘・・・・、28 年前、初めて海外へ飛び立った時の感慨は忘れられない。

<光の反射への意識と露出オーバーの失敗写真> ・・・・白壁と明るい陽差し、そしてその照り返し、狭い路地から広場へ出たときの" ホワイトアウト" 的な白い世界にわずかに見え隠れする街並みや人影はモチーフとして魅力的に映る。

<ブレた人物> ・・・・旅先でのスナップ写真の背景で佇む見知らぬ人や駆け抜ける人、通りすがりの人々の自然なポーズは、時にブレたりしながら、そのフォルムは興味をそそるものとなる。

<光と影の絡み合い> ・・・・樹木から差す木洩れ日、建物と人物の組み合わせ、光によって生まれる影、影と影あるいは影と陰の結合によるフォルムの変化は光の差し方とともに、画面空間に変化を与え、複雑さを加える。

" 影" は、実体と想像のはざまの不可思議な存在として魅力を感じている。

<建造物の単純化と空気感の増加> ・・・・建物は風景の雰囲気を決定づけるもののひとつといえる。初めは建物の美しさに惹かれていたが、明暗の表現から、次第に風景を包み込んでいる空気そのものの表現に重点を置くようになってきた。

学生時代から数えて、節目節目で環境が変化したり、制作のモティベーションが上下したりしながら今日まで約35 年、自由美術に出品し始めてから23 年という月日が流れた。その間、日常と非日常の中で様々な人やものから刺激を受け、現在の絵が形成されてきたように思う。今後もよろしくお願いします。